理解不能だけど心地よい、angine de poitrineの音楽

芸能
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楽器の弦が自然増殖し始め、気がつけばフレットの数やスケールの長さに一喜一憂している。

そんな「深すぎる沼」に足を踏み入れた楽器オタクの皆様、お疲れ様です。

そんな変態が何人も居てたまるか

プライマス(Primus)のレス・クレイプールが放つ変態的ベースラインに脳を焼かれ、Base Ball Bearの関根史織さんがチャップマンスティックを抱えて未知の低音を叩き出し始めた姿に「これだよ、これ!」と快哉を叫んだ貴方なら、きっと分かってくれるはずです。

楽器オタクは、極めれば極めるほど、一般人には理解できない「独自の進化(あるいは退化?)」を遂げていきます。

今回は、そんな一般社会の常識からはるか遠く、現代の地球人が聴くにはあまりにも早すぎる(あるいはズレすぎている)、しかし一度ハマると抜け出せない究極の変態的デュオ「Angine de Poitrine(アンジーヌ・ドゥ・ポワトリーヌ)」をご紹介します。

彼らの音楽と生態を前にしたら、貴方の持っている多弦ベースやエフェクターボードなんて、あまりにも常識的でピュアな存在に見えてしまうかもしれません。

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そもそも「Angine de Poitrine」とは何者なのか?

まずは彼らの基本プロフィールから。

カナダ発のユニットである彼らの構成は極めてシンプルです。

ギター&ベース(マルチインストゥルメンタル)

ドラム

これだけ見れば、「あぁ、ロイヤル・ブラッド(Royal Blood)とか

あの手の音圧バリバリ系デュオね」と思うかもしれません。

しかし、そんなまともな物差しは彼らには一切通用しません。

彼らがステージに現れた瞬間、視覚は完全にバグを起こします。

かつて世間を騒がせた「ZOZOスーツ」を想起させる、全身を包み込む謎の水玉タイツ。

顔面を覆うマスクからは、長い鼻のような突起がポヨンポヨンと揺れ、頭部には異常にデカすぎる謎の帽子(あるいは頭そのもの)が鎮座しています。

音楽を聴く前に、まず「私は今、何を見せられているんだ?」という壮大なゲシュタルト崩壊が始まります。

この「良い意味での気持ち悪さ」と「不気味な愛嬌」のバランスが、すでにタダモノではありません。

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自作ダブルネック×「微分音」という狂気

彼らの真骨頂であり、楽器オタクが最も脳髄を揺さぶられるポイントが、そのプレースタイルと、彼らが手にする「未知の武器」にあります。

フロントマンが抱えるのは、一見して異形とわかる「自作のギター&ベース・ダブルネック

これだけでも男のロマンが詰まりすぎていて白飯が食えるレベルですが、恐ろしいのはその指板(フィンガーボード)です。

通常のギターは1オクターブを12の半音に等分した「平均律」で作られています。

しかし、彼の楽器のフレットは、その半音の隙間をさらに細かく区切った「微分音(マイクロトーン)」の配列に合わせて打ち込まれています。

名もなき音と音の隙間。

西洋音楽が切り捨ててきた「割り切れない音程」を出すためだけに、独自の計算でフレットが配置されているのです。

更にルーパーを駆使して、その微分音の奇妙なリフを幾重にもレイヤーしていくサウンド。

普通なら「チューニングが狂った不快な音」になりそうなものを、彼らは圧倒的なグルーヴ感でねじ伏せていきます。

狂っているのに、緻密。

変態的なのに、ファンキー。

この矛盾こそが彼らの真髄です。

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死体遺棄を疑われる? 突き抜けた変人エピソード

彼らの「頭のおかしさ(最大級の褒め言葉)」は、音楽性だけでなく、バンド活動の日常にも地続きで現れています。

前述の通り、彼らのメインウェポンは完全自作の特殊形状ダブルネック。

当然ながら、フェンダーやギブソンのケースに収まるはずがありません。

市販のハードケースはおろか、ギグバッグすら存在しないのです。

では、彼らはどうやってこの世界に1本しかない家宝を持ち運んでいるのか?

「寝袋(シュラフ)に入れて運ぶ」

これが彼らのソリューションです。

愛する楽器を寝袋に包み、ツアーのために空港の荷物検査やセキュリティを通過しようとする姿を想像してみてください。

あの異様な形状の肉厚な塊が寝袋に包まれてコンベアを流れていく様は、どう見ても「死体を運んでいる不審者」そのもの。

実際に空港で「死体遺棄」を疑われ、厳重なチェックを受ける羽目になったというエピソードも…

そんなエピソードも含めて、ロックンロール(?)な生き様を地で行っています。

衣装のポヨンポヨンした鼻のまま移動しているわけではないでしょうが、素顔の彼らもまた、常人の斜め上を行くマインドの持ち主なのです。

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なぜ、この「地球外生命体」の音楽に私たちはノれてしまうのか?

ビジュアルは不気味。

楽器は微分音。

エピソードは不審者。

客観的に見れば、現代の地球人に馴染む要素など1ミリも見当たりません。

アヴァンギャルドやノイズミュージックの棚に放り込まれて、一部のマニアがニヤニヤして終わるはずの音楽です。

なのに、なぜか滅茶苦茶にノれてしまう。

ここが彼らの最も恐ろしいところであり、天才的な部分です。

手数の多いドラムが叩き出す原始的で強力なビートと、ルーパーで構築される中毒性の高いミニマルなリフが合わさった瞬間、脳内麻薬が分泌されます。

変態的なアプローチを支えているのは、実は超一級品の「リズム感」と「ポップセンス(の変異体)」なのです。

最初は「なんだこれ……」と引き気味に見ていたはずの観客が、気づけばその変拍子や微分音のうねりに合わせて、首を縦に振らざるを得なくなる。

理性が「気持ち悪い」と拒絶する前に、身体が「気持ち良い」と降伏してしまう、謎の呪術的中毒性がここにはあります。

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貴方の脳に、新たな「変態の扉」を

レス・クレイプールを聴いて「ベースって打楽器だったんだ」と感動したあの日のように。

チャップマンスティックのタッピングを見て「弦楽器の概念が変わった」と衝撃を受けたあの時のように。

Angine de Poitrineは、貴方が構築してきた「音楽の常識」を、あのポヨンポヨンした鼻で軽快にぶち壊してくれます。

弦が増えるくらいで満足していていいのか?

既存のフレットの枠に収まっていていいのか?

四角いケースに楽器をしまっている場合なのか?(いや、寝袋は真似しなくていいですが)

彼らの音楽を聴いた後では、いつもの愛機から出る音が、少しだけ物足りなく、そして愛おしく感じられるはずです。

YouTubeの検索窓に「Angine de poitrine」と打ち込む準備はできましたか?

現代の地球で最もディープで、最高にファンキーな「変態の世界」へ、ぜひ足を踏み入れてみてください。

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